放我庵|HOGAN
2024|Residencial, Guest House|禅庭を堪能できる宿泊と体験を提供する住居
約300坪の敷地には、長年にわたり宮内庁や臨済宗の禅寺の庭に携わった曽根造園が手掛けた禅庭が広がる。母屋は丁寧に住まれた痕跡が残る風情ある日本家屋であり、一方、離れは近代的な暮らしに合わせた内装が施されていた。
母屋は住居として、新たな住まい手の暮らしに合わせ最小限の改修を行い、離れは宿泊施設として、禅庭と連続する特別な宿泊体験を提供できるようフルリノベーションを行った。
母屋では、傷んだ箇所の修繕と水回りの改修を行い現代的な生活に対応させた。また、新たなプログラムを受け入れるため、部分的に内装を更新した。新たに更新する箇所については、空間を少し引き締めるとともに、生活感の出そうな部分を間引く意図で、様々な黒い素材を用いた。
離れは、43㎡程度の、LDK、水回りのあるゲストハウスとして全面改修した。面積を超えた広がりと特別な宿泊体験を生むため、豊かな外部環境の関係性に配慮した。
離れは南北の庭に挟まれていたため、離れの中を庭が通り抜けるように設計し、南北の庭と室内が一体的かつ連続的に体験できる空間を目指した。
具体的には、二つの庭をつなぐ部分をトンネル状のLDKとし、引き込み戸や引き分け戸によって開口部を全開可能な状態とした。LDKの床は造園工事の延長として石組みを施し、その上をセメント研ぎ出し、飛び石を象嵌した仕上げとした。床に配置された石は、フラットに研ぎ出したものと、石肌を残し足触りを楽しめるものを組み合わせた。内壁の仕上げを外壁と連続させ、境界部分の処理や建具ディテールの調整によって、内部と外部の境界を曖昧にした。庭と室内をしりとりのように、一部共通させながら一部を異らせる手法でつなぎ、建築と庭が互いに影響し合いながら一体となる関係性を模索した。浴槽は床を掘り込み縁のない形状とし、庭への抜けを遮らない形状とした。床レベルまで湯を張ることで北側の庭を映し込み、水の床として庭の潤いを室内に取り込んだ。
作庭が先にあり、それに建築が呼応し、さらに建築に合わせ庭を調整することで、双方が影響し合いながら環境を創り上げていく。互いに補完し合いながら空間を作り上げるという、貴重な経験をさせてくれたプロジェクト。
- 所在地
- 京都市
- 主用途
- 住宅, ゲストハウス
- 規模・構造
- 建築面積:226.87㎡/延床面積:285.08㎡/木造2階建, 平屋建/1階:226.87㎡, 2階:58.21㎡
- 敷地条件
- 第一種低層住居専用地域/10m高度地区/風致地区第1種地域/歴史的風土保存区域/遠景デザイン保全地区 他
- 造園
- 曽根造園
- 室内庭(LDK)の床石組
- 曽根文子
- 施工
- 株式会社 再京建設, 古川新
- LDK床左官
- 高田裕二
- 写真
- 矢野紀行写真事務所